Skip to main content

新型コロナウイルス感染症(Covid-19)に関するよくあるご質問(FAQ)

Image
FAQ-resized.jpg

最初の質問:現在のCovid-19の世界的流行によってPI保険の補償に影響がありますか?

 

端的にお答えすれば、ありません。

 

しかし、PIクラブでは加入した船舶が船級を取得し、この船級を維持することを義務付けています。Covid-19に起因して船級証書の期限が切れそうな場合や、更新が遅れそうな場合に問題となる可能性があるからです。

 

幸いなことに、多くの旗国は、船級証書の有効期間を延長することへの同意を含め、合理的かつ実用的なアプローチを適用する必要性を既に認識しています。また、船級協会も同様に、必要な検査を完了することができない場合には、証書の有効期間を延長することに同意しています。許可される延長期間は通常、当初3カ月です。船舶がこの期間内に必要な調査および監査を完了することができない場合、安全基準を維持しつつ登録証をさらに延長することができるかどうか、また、どのように延長できるかについて議論されているところです。

 

A          乗組員:

 

1        乗組員が交替できないために船舶上に残らなければならない場合の契約、証明書、「重複」賃金等について

 

これは、乗組員の交替を許可しない港が増えてきているためますます頻繁に見られる問題です。また、Covid-19に関連する国境や航空会社の制約により、乗船している乗組員が単に船舶から離れることができない場合、または新しい乗組員が乗船できない場合もあります。下記について多くの問題が発生する可能性があります。

 

船員契約の満了:契約期間は様々であっても、海上労働条約(Maritime Labour Convention、以下「MLC」)に基づき、12カ月を超えてはなりません。しかし、国際運輸労連(ITF)は、MLCの期間またはITFが承認した団体交渉協定下で許容されるその他の期間を超えた場合であっても、2020年4月16日までは、個々の船員が延長に同意することを条件として1カ月までの延長に異議を申し立てないと述べています(2020年3月17日付電子回覧087)。多くの国も同様に延長を許可すると述べています。

 

船員証明書および医療証明書の有効期限:主要船員供給国(および承認を発行する旗国)の大半、ほとんどの行政機関が、証明書の有効期限を1カ月~6カ月延長することを発表しています。

 

P&Iクラブの雇用前健康診断(PEME)の有効期限:当クラブ計画では、PEMEの有効期間は12カ月ですが、当初12カ月の有効期間からさらに3カ月間の延長が可能であることを、当クラブは提携するクリニックとの間で合意しています。

 

「重複」賃金:船主は、船舶に残らなければならない乗組員、および乗船予定か乗船中の交替乗組員の双方の賃金に対して責任があると認められますが、当該賃金は補償の対象となりません。

 

最後に、注目すべき点は、国際海事機構(IMO)が、政府と規制当局への提言の予備的考察(2020年3月27日付回覧4204/Add 6)において、職業船員および海上要員を「キーワーカー」として指定すること、彼らの乗船または下船を容易にするために国内の移動または行動の制限を免除すること、および乗組員の交替および本国送還のために彼らが港で船舶を下船し、領域を通過することを許可することを挙げているということです。今後も状況を報告いたします。

 

2          乗組員が乗船前または下船後に陸上での隔離期間を経なければならない場合

 

この期間が国境、港その他の当局の命令または規則により課されている場合であっても、この期間の宿泊費、食費その他の費用および賃金は運営上の性質のものであることから、補償されないと考えられます。例外的に乗組員が勤務中にウイルスに感染し、隔離期間が本国送還または治療に必要な期間である場合などは、補償の対象となる場合があります。

 

3          乗組員が乗船前または船舶上で予防的な検査を受ける場合

 

当該検査の費用は、検査実施が乗船前か乗船中かに関わらず、補償の対象となりません。しかし、乗組員が勤務中に感染した場合で、当該検査が乗組員の治療の一部である場合は補償に含まれる可能性があります。

 

4          症状のある乗組員が船舶上で隔離される場合

 

隔離が検疫の一部であるまたは公衆衛生上の命令に従っている場合は、原則として、補償の対象となります。ただし、当クラブは、通常の運営費用を超える追加費用のみを補償します。船舶上での食料や食事などの費用はいずれにしても発生しますので、これらの費用は補償されないと考えられます。当クラブの規則における「検疫」の構成については、下記のC2をご参照ください。

 

5          症状のある乗組員が船舶から下ろされ陸上で隔離される場合

 

隔離が検疫の一部であるまたは公衆衛生上の命令に従っている場合、当クラブは関連する追加費用を補償します(宿泊費、食費、旅費が考えられますが、賃金は対象外です)(検疫については、規則25* xiiおよび下記のセクションCをご参照ください)。

 

6          症状のある乗組員が本国に送還される場合

 

乗組員が感染し送還が必要な場合、送還費用は、規則25 ii c (i) に基づき補償されると考えられます。

 

7          乗組員が船舶上で感染した場合

 

この場合はその他の疾病または傷害と同様に、下記が補償の対象となります。

当該乗組員の疾病、傷害(または死亡)に対する治療の義務を含む損害または補償に係る加入者の法的責任(規則25 ii a)

合理的な入院および医療費(規則25 ii b)

当該乗組員を送還する費用(送還の過程で不可欠かつ必要な検疫や隔離の期間を含む)(規則25 ii c)

通常の運営費用を超える費用で、当該乗組員に必要な治療を確保するために単独でかつ合理的に支出される範囲での港費および離路費用(燃料、保険、乗組員の賃金、保管、食料品、港費)(規則25 ii g)

感染した乗組員を交替させるために必然的に発生する一定の乗組員交替費用(規則25 ii d)

 

8          下船後(または乗船前)に乗組員が感染した場合

 

下船する乗組員が乗船中に感染した場合は、上記A7と同様の回答となります。航海における乗船前または下船後にCovid-19に感染した場合も同様の補償が適用されますが、これは当該乗組員が感染した時点で船主と契約中であるか、契約を継続している場合に限られます。ほとんどの場合、乗組員は契約を継続していると考えられますが、最終的には、乗組員の雇用契約の条件および範囲、また関連する管轄区域における適用法令または規則に依存することになります。

 

9          感染した乗組員が陸上で治療を受けるために船舶が迂回する場合

 

通常の運営費用を超える費用で、当該乗組員に必要な治療を確保するために単独かつ合理的に支出される範囲での一定の港費・離路費用が補償の対象となります(上記A7参照)。

 

10         フィリピンにおける120/240日ルールについて

 

不履行による障害給付金の最高額認定を回避するために、会社指定医師(Company Designated Physician、以下「CDP」)は、120日以内に、就労可否の判断または障害等級に関する最終評価を行わなければなりません。この期間に船員の治療を延長する十分な理由がある場合にCDPは、最大240日間まで、船員の治療を延長することができます。

 

ルソンにおける地域検疫の強化により、現在、CDPが医療を施すことができず、船員は自身の州で通常診療を受けることが困難になる可能性があります。さらに重要なことは、120/240日ルールの厳格な遵守が、乗組員が受ける治療を制限または短縮し、乗組員の回復を脅かす可能性があるということです。

 

解決策となり得る措置は、120日または240日の期間が満了する前に、乗組員が手書きで治療の延長を要請することについて、彼らの同意を得ることだと理解しています。CDPが発行する医療報告書には、乗組員の書面による要請があれば治療を継続する旨の記載があります。

 

この件については、当クラブのウェブサイト上の「フィリピンにおける乗組員損害賠償ガイダンス」でより詳細に説明されています。

 

B          乗客:

 

1           乗客が船舶上で感染した場合

 

この場合はその他の疾病または傷害と同様に、下記が補償の対象となります。

当該乗客の合理的な入院および医療費を含む疾病、傷害(または死亡)に対する損害または補償に係る加入者の法的責任(規則25 ii aおよびb)

当該乗客を送還する費用の責任(送還の過程で不可欠かつ必要な検疫や隔離の期間を含む)(規則25 ii c)

通常の運営費用を超える費用で、当該乗客に必要な治療を確保するために単独でかつ合理的に支出される範囲での港費および離路費用(燃料、保険、乗組員の賃金、保管、食料品、港費)(規則25 ii g)

 

2          船舶上で感染者が発生したことで航海が短縮された場合(感染した乗客について)

 

Covid-19に実際に感染した乗客に関しては、上記B1で記載したように、他の疾病または傷害と同様に下記が補償の対象となります。

当該乗客の疾病、傷害(または死亡)に対する損害または補償に係る加入者の法的責任(旅客船の航海の短縮、楽しみの喪失などに対する請求を含む)

合理的な入院および医療費の責任(乗客の方々は、最初にご自身の旅行保険や医療保険をご確認いただくようお願いします)

当該乗客を送還する費用(送還の過程で不可欠かつ必要な検疫や隔離の期間を含む)

通常の運営費用を超える費用で、当該乗客に必要な治療を確保するために単独でかつ合理的に支出される範囲での港費および離路費用(燃料、保険、乗組員の賃金、保管、食料品、港費)

 

検疫に関する規則(下記参照)も関連する可能性があります。

 

3          船舶上で感染者が発生したことで航海が短縮された場合(感染していない乗客について)

 

(航海短縮に関する)運送契約に基づく損害または補償の責任は、それが感染者の発生により生じ、かつその発生が乗客の生命、健康もしくは安全に脅威を及ぼした場合にのみ保険で補償されます(規則25 ii f)。脅威は現実的かつ実質的である必要がありますが、これはいずれの場合も事実上存在しているかが問題になります。

 

送還の費用は当然には補償されないと考えられますが、一定の状況下で管理者は、当該費用の全部または一部を払い戻す裁量権を有します。

 

C          検疫(規則25 xii):

 

1           本規則に基づく補償の前提条件は何ですか?

 

入港した船舶上で感染症または伝染病が発生している、または(補償を求められている)費用が検疫に関するものであることが条件です。

 

「特別」費用のみが補償されます。

 

2          「検疫」費用と「特別」費用を構成するものは何ですか?

 

ここで言う「検疫」とは、当該船舶を隔離する期間において離岸させる、または停泊や乗組員上陸を許可する前に隔離させるという港湾当局の要求を広く含むと理解しています。ただし、その要求がCovid-19に直接関連する場合に限ります。

 

「特別」費用の構成要素は状況によりますが、ほとんどの場合、通常の運営費用を超える費用、および感染症や検疫がなくても発生したであろう費用を意味します。

 

3        船舶が停泊前に検疫を受ける場合、感染症の発生により停泊中に検疫または離岸を命じられた場合、または船舶上で感染症が発生するおそれがある場合

 

船舶上で実際に感染症が発生した場合は、上記の前提条件が満たされ、検疫規則が発動されます。この規則は、下記の追加・特別費用を対象とします。

入港した船舶または乗船者の消毒(検疫における燃料の搬入、貨物の積み下ろし、乗客および乗組員への食料供給などの費用)

検疫または公衆衛生上の命令に従った場合の、いずれかの場所への往復または停泊の際の消費燃料代または曳航費用

港または避難場所(港内の停泊所や係留地などを含む)への退去およびその後の航海の再開に直接伴う費用(時間外労働などの追加賃金や港費を含む)

 

*ただし、検疫の対象となることが知らされた、または知らされたと合理的に判断できる港に当該船舶が入港した場合には、この規則は適用されませんのでご留意ください(船舶が既に契約上その義務を負っていた場合を除きます)。*

 

実際に感染症の発生がない場合(疑われただけだった場合)、当該船舶は検疫を受けているため、再び前提条件が満たされ、上記と全く同じ方法で補償が適用されます。

 

4        船舶が停泊前に検疫を受ける場合、感染症の発生はないが停泊中に検疫または離岸を命じられた場合、または船舶上で感染症が発生するおそれがある場合

 

この状況においても、当該船舶は検疫(この用語の解釈については上記C2をご参照ください)を受けているため、再び前提条件が満たされ、上記C3と全く同じ方法で補償が適用されます。

 

5        停泊地から離れている期間(通常14日間)が経過するまで、船舶の停泊が許可されない場合(このような「検疫命令」は存在しませんが)

 

この状況では、停泊地から離れる要件を慎重に検討する必要があります。Covid-19の世界的流行に直接関連していると当クラブが判断した場合(上記C2参照)、本規則に基づく補償の前提条件を満たすものとして、これを「検疫」として扱い、上記C3と全く同じ方法で補償が適用されます。

 

一方、当該要件がCovid-19に関係がない港の日常的な運営上の要件である場合には、本規則に基づく補償の対象となりません。

 

D          積荷の問題(規則25 xiii

 

1        運送契約で指定されている港が閉鎖され、その結果、貨物が別の場所に引渡される場合、積荷に対する賠償責任に関する通常のP&I保険に影響はありますか?

 

これに関しては2つの潜在的な懸念事項があります。1つ目は、これは離路に相当する可能性があり、当クラブの規則では、離路に起因してまたはその結果として生じる積荷に対する賠償責任については保険による補償がないと規定していることです。ただし、管理者はそのような離路に同意することができます(規則25ただし書(iii))。その場合には、当クラブの通常の連絡先にご連絡をお願いいたします。

 

2つ目は、運送契約によって認められた港以外での貨物の陸揚げに起因して生じる賠償責任等については、現在のところ補償の対象とならないことです(規則25ただし書(viii)(a))。用船主または貨物の利害関係者から補償状(Letter of Indemnity、以下「LoI」-国際グループの書式Bの文言など)を取得することで、この補償の損失によって生じるリスクを軽減できる可能性があります。しかし、そのようなLoIは完全な解決策ではありません。他の問題においても、その文言は特定の状況で適用するには十分ではない可能性があり、LoIに基づく補償は常に、そのLoIを提供する当事者の信用力に依存します。

 

いずれにしても、この場合は当クラブに問い合わせることをお勧めします。必要に応じて、追加の補償を提供できる可能性があります。

 

2        上記の結果、船荷証券が荷渡しを受けるの際の提示に間に合うように「新しい」引渡地に到着していない場合、補償に関して問題が生じますか?

 

少なくとも英国の法律では、荷渡しを受けるためには船荷証券(たとえそれが流通禁止、または記名式船荷証券であっても)を提示する必要があります。よって、船長が証券なしで貨物を引渡した場合は契約違反となり、その結果生じた損失については、船主が責任を負うことになります。最も可能性の高い損失は、貨物の荷渡し違いに対する請求です。

 

このことは、当クラブの規則にも反映されています。この規則では、船荷証券またはその他の類似する権原証券の提示を伴わない貨物の引渡しに起因して生じる賠償責任などについては、現在のところ補償は適用されないと規定しています(規則25ただし書(viii)(b))。ここでも、LoI(国際グループの書式Aの文言など)を取得することで、この補償の損失を軽減する何らかの保護を提供できる可能性がありますが、上記D1と同じ理由により、完全な保護は提供されません。

 

このような場合は、当クラブに問い合わせることをお勧めします。必要に応じて、追加の補償を提供できる可能性があります。

 

もちろん実際には、電子証券がこの特定の問題の解決策を提供できる可能性があります。

 

3        「新しい」引渡地へ貨物を輸送するには追加費用が発生しますが、その費用のうち補償の対象となるものはありますか?

 

そのような費用は補償の対象となりません。これらの費用は、いずれの補償対象にも該当しない、本質的に運営費や運送費です。

 

4        陸揚港での遅延により生鮮貨物が損傷した場合、その損失や損害に対して通常のP&I保険は通常の方法で利用可能ですか?

 

可能です。

 

そのような損害は、他の貨物に関する請求と全く同じ方法で、当クラブの規則に基づいて補償されます(ただし、当然のことながら、当該遅延が離路を構成するほどのものではなく、加入者が不用意に行動しなかった場合に限ります。具体的には、船舶の遅延が結果的に貨物に危険を与えることになると知りながら航海を開始しなかった場合などです)。

 

ヘーグ・ルール、ヘーグ・ヴィスビー・ルール、またはUS CoGSAに従い、第IV 2条(g)「...公権力による処分...」または(h)「検疫の制約」に基づき、運送人が抗弁を有する可能性があるということは注目すべき点です。

 

E          契約:

 

FD&Dの補償を有する加入者の場合、他の紛争と同様に、Covid-19関連の用船契約または契約上の紛争に関して支援を受けることができます。当クラブのウェブサイトに掲載されている契約上の問題に関する事項もご参照ください。

 

*規則の引用は、「所有の規則」を参照しています。用船契約の事項に関連するのは規則25ではなく規則21ですが、それ以外の番号は同じです。

  

上記は、あくまでも一般的な概要を示したものであることにご留意ください。Covid-19に関する特定の問題に関しては、当クラブの通常の連絡先にご相談くださるようお願いします。