07 2020

当クラブは、マラッカ海峡およびシンガポール海峡および周辺海域における(無害航行・通過航行以外の)航行に関して照会を受けていますが、これらの海域では、各国(シンガポール、インドネシア、マレーシア)が極めて近接しており、この地域でのこれらの国による管轄権行使が、船舶運航事業者にとって懸念材料であることが示されています。
最近のBIMCO(ボルチック国際海運協議会)の記事によると、これは管轄区域の重複と、これら管轄の実施における若干の混乱が主な原因であるとのことです。
この記事の内容を要約すると、下記のとおりです。
船舶は、無害航行または通過航行(安全確保のための停止もしくは停泊、または不可抗力もしくは遭難により必要とされる場合を除き、継続的かつ迅速に航行すること)が認められています。
上記の無害航行または通過航行以外で下記のような計画を運用する際は、規制当局との潜在的な衝突の可能性を回避するために注意しなければなりません。
ドリフト/ETA(入港予想日時)調整のための減速/接岸の指示待ち等
- 停泊
- 停泊中または航行中の船舶間(STS)作業
- 港外錨地(OPL)作業(乗組員の変更、保管、補給、修理、調査等)
場所および適切な報告要件の遵守が鍵となる場合が多く、規制当局の要件に従わない事業者は、下記の事態に直面する可能性があります。
- 拘留
- 罰金
- 逮捕
マラッカ海峡およびシンガポール海峡の通過、またはこの域内の場所への航行を計画する際、考慮すべき重要事項は下記となります。
- 無害航行および通過航行以外の作業は避けること。
- この海域での活動を計画する場合は、シンガポール、マレーシア、インドネシアのいずれかで、正しい管轄権や権限を明確にすること。
- 重複する管轄区域を避け、疑わしい場合は確認すること。
- 管轄区域の境界に近い場合は、明確な安全マージンを設定し、船舶の位置を綿密に監視し、適切な措置をとり、他の規制当局管轄区域への侵入を避けること。
- 事前に目的(活動内容/場所/期間等)を通告し、適用されるすべての管轄区域において必要な承認を適切な当局から受けたのちに現地に赴くこと。変更があるとき、(計画されている場合は)事前に、(計画外の場合は)速やかに通告すること。
- 航行中は自動認識システム(AIS)が常に作動していること。故障または作動不能の場合には、速やかに対象沿岸国に通知すること。
BIMCOの記事はこちらからご覧になれます。
その他の参照先:
国際機関:
- 海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)、特に第18条、第19条、第37条~第44条。
- 海上における生命の安全のための国際条約(SOLAS)。船舶自動識別装置(AIS)については、第5章第19規則を参照のこと。
- IMO(国際海事機関)決議1106(29)、2015年12月2日(船舶自動識別装置(AIS)の船内使用に関するガイドライン改訂版)。
シンガポール:
- 港湾船舶に関する通報第3号(2019年)(シンガポール西岸港湾区域を航行する船舶の報告手続について)
- 港湾船舶に関する通報第6号(2019年)(シンガポール海洋港湾管理局について-停止)
- 港湾船舶に関する通報第8号(2019年)(指定錨地以外への投錨禁止について)
- 港湾船舶告示第65号(2002年)(AISの船上運用のためのガイドライン)
マレーシア:
- 1952年商船規則(セクション491B)
- マレーシア航行告示MSN 5(2014年)(マレーシア海域における船舶活動に関する海事監督官への通知)。
インドネシア:
※本記事は当クラブのロスプリベンション担当、Nahush Paranjpyeによって執筆されました。