船荷証券の提出なく、貨物が引渡されるケース (2019年11月 掲載記事の抄訳)

May 2020

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不正な船荷証券により貨物が引渡された最近の事例は、船主が、船荷証券の提示が無いまま用船者による補償状(LOI)により、貨物の荷揚げ及び引渡しをせざるを得ないとする用船契約上の条項に同意するリスクを浮き彫りにしました。

 

かなり以前となりますが、2001年に発行された国際PIグループ(IG)の回報の中に、「メンバーの皆様は、そのような条項を決して受け入れないよう、強くお勧めいたします…」との記載があります。そうは言っても、用船者はそのような条項を(契約書に組み込むことを)通常求めており、(船主)はビジネス上のプレッシャーがあるため、受け入れざるを得ません。このような条項を求めることについてよく言われる説明は、特に近距離を航行する場合や複数の取引・再用船を行う場合で、銀行間の連携が遅れたことにより、船舶の到着時に船荷証券が発行されていないことがあるというものです。そのような条項への同意が、貨物の誤った引渡し(ミスデリバリー)における賠償請求の原因となった事例は非常に少ないものの、メンバーの皆様におかれましては、この潜在的なリスクを認識され、同時にそのようなリスクを軽減する手段をご検討ください。

 

このような状況下におけるP&I保険の観点から、まずは、メンバーの皆様にとって有利となるようPIクラブのダイレクターが裁量を働かせない限り、適正な船荷証券の提出が無いまま貨物が引渡された場合の賠償請求については担保されません。これは、少なくとも英国法の下においては、貨物のミスデリバリーにおいて船主は船荷証券の所持人に対し責任を負い、通常抗弁を有さないからです。また、通常のパッケージ・リミテーション(1梱包または慣習的な運賃単位当たりの運送業者(運送人)の責任限度額)も適用されません。

 

こうした場合、商習慣の変化に従って、用船者あるいは他の関係者(貨物の荷受人等)は補償状の提出に同意します。そうすることで、船主を法的に保護することになります。2001年2月発行の当該回報では、国際PIグループ(IG)は補償状に用いる望ましい文言をご提供し、これを実行している方は稀ですが、銀行にカウンターサインしてもらうよう助言しています。

 

補償状が提供されることで潜在的に一定の補償が提供されることとなりますが、メンバーの皆様には、補償状の提供者にかかわる信用リスクを負うということも踏まえてご判断いただきたいと思います。補償状の提供者が、例えば、国際石油資本または大手商社の場合はそれほど重要ではないかもしれませんが、十分な資金力の無い関係者が発行する補償状は、それほど信頼性が高くないかもしれません。その結果カバーできない責任をメンバーの皆様が負うことになるかもしれません。補償状の条項が履行される保証はありません。賠償請求するための訴訟手続きを起こすことになるかもしれません。

そのような用船契約条項が提示された時に、メンバーの皆様がご自身を守るためのさらなる方法は、以下の通りです。

 

  1. まず大事なのは、補償状を発行する当事者の与信調査です
  2. 用船契約条項に係る文言、および、発行される補償状に係る文言の双方が、荷揚げや引渡しの予定日といった状況を十分に幅広く設定していることを慎重に確認します。
  3. 補償状の発行者が用船者以外の関係者の場合は、そのような同意があるかどうか見極めてください
  4. 航海用船の場合、 契約の成約前に、提示された引渡しの手順の詳細を要求してください。一般的に、用船者に代わって荷揚げ港の現地の代理店が遂行しますが、船荷証券の到着次第貨物をリリースできるように手配します。もし不正な船荷証券の提示によってその代理店が貨物を引渡してしまった場合、その代理店に対して(補償状に基づく請求に加えて)賠償請求を行うことができるかもしれません。
  5. 貨物が代理店の下で保管されていて、もしオリジナルの船荷証券の譲渡不能の写しが船内にある、あるいは荷揚げ前に船主が受領していれば、それらの写しを代理店に提示し、そして適切に裏書されることにより(例えば、「Specimen, non-negotiable」等のように) 、それらの写しがオリジナルの船荷証券と最終的に一致していることを代理店は確認することができます。

すべての方法が失敗し、かつ(a)防御できないクレームが成立し、(b) 補償状による損失の取り戻しも不可能となった場合、PIクラブのダイレクターの裁量に委ねられることになります。

 

「メンバーの皆様が対応した事案や状況に対して、リスクを回避するために、上記の手段をメンバーの皆様が正当に遂行したことをPIクラブのダイレクターが承認していること」が要件となります。

 

念頭に置いていただきたいのは、上で述べた理由により、クラブ・カバーでは担保されないかもしれないということです。メンバーの皆様には、ミスデリバリーに起因するリスクに備えた別の保険を推奨いたします。ご要望がございましたら、合意された特別条項および条件に沿った補償を、弊クラブはご提供できるかと思います。

 

Charles Brown

Head of Claims

 

なお、本抄訳は便宜的なものであり、詳細は以下のリンク先をご参照ください。

https://www.steamshipmutual.com/publications/Articles/delivery-of-cargo-without-production-of-bills-of-lading-a-recap112019.htm